労務管理用語集:さ行
さ行
再雇用制
定年年齢到達者をいったん退職させた後、再び雇用する制度のこと。
採用管理
採用管理とは、企業にとって必要な仕事が要請する資格要件を基準として、求職者の中からそれにより多く適合するか、あるいは少なくとも最小限の基準には合致している人を、要員計画に従って一定人員を雇い入れる組織的措置である。したがって、内容としては、次の3つからなる。 (1)企業が必要とする人員を定めること (2)採用基準を合理的に設定すること (3)採用基準に照らして適性のあるものを合理的に見出すこと
資格制度
従業員に一定の資格を与えて、昇進、昇格、賃金決定などの基準とする制度のことをいう。通常は、職務遂行能力・技能・知識・経験などを職制と結びつけた能力主義体系といえるが、役職不足を補い、モラールを高める観点から、職制を補う形で導入する例もある。
仕事給
年功給に対比される言葉で、賃金が、その労働者の従事する仕事の種類、内容によって主として決められる場合にいう。代表的なものとしては、職務給や職能給がある。
自己啓発
自己啓発とは、自己の潜在能力を自らの意思と努力によって開発しようとする活動のことをいう。
自己申告制度
人事考課のための情報収集の一つの方法として、従業員各人の能力開発、人事異動などに関する希望を会社に申告させる制度。
自社年金
年金積立金をすべて自社により自由に運用できる年金をいう。 積立金を流用できること、また、個人への配分も自由にできることなどがメリットであるが、一方で積立金が損金扱いとならないこと、積立金の保全面に不安があることなどのデメリットがある。
失業率
失業者の発生している度合いを示すもの。総務庁統計局の「労働力調査」によって「完全失業者数」を「労働力人口」で除して算出され、その割合を「完全失業率」という。「完全失業者」とは、毎月末日に終わる1週間の調査期間中に、収入を伴う仕事に1時間以上従事しなかった者のうち就業が可能で、これを希望し、かつ、求職活動をした者をいう。
実質賃金
労働者がその労働の対価として受け取る報酬である賃金をその時点での消費者物価で除した実際の購買力を示す賃金。
質問紙(表)法
職務情報として必要な項目について、あらかじめ質問表を作成しておき、これを職務担当者または監督者に記入させる方法である。 <長所> (1)比較的短時間に情報収集ができる。 (2)多くの従業員を対象とできる。 などがある。 <短所> (1)職務担当者の主観が入りやすい。 (2)監督者の記述が職務担当者への監督者の期待である。 などがある。
社内報
企業が、人間関係管理の一環として、従業員やその家族向けの雑誌や新聞のことである。 従業員に企業の方針や活動内容を周知させ、勤労意欲(モラール)を高めたり、企業の一体感を生み出すことを目的としている。
就業者
一般には何らかの職に就いている者をいうが、就業上の地位から、自営業者、家族従業者及び雇用者の三つに分けられる。
終身雇用制
企業が労働者を定年年齢に達するまで、継続して雇用すること。年功序列制、企業内(別)組合と合わせて日本型労務管理の根幹をなすもの。従業員の生活も保障され、従業員の会社に対する帰属意識も高くなる。
出向
企業外への人事異動の一つ。 企業の外に向かって行われる点で、同一企業内での就業場所または職務の変更にとどまる配置転換(配転)と異なる。 出向には、自己の雇用先(出向元)の従業員としての身分を保持したまま他の出向先会社に異動し、異動先の使用者の指揮命令に従って労務を提供する在籍出向と、雇用先の従業員としての身分を喪失する移籍出向(転籍または転属)とがある。
昇格
昇格基準に基づき資格が上がることをいう。昇格は、現在格付けされている資格から上位の資格に上がるため、通常、職能資格給が上昇し、いわゆる昇格昇給が行われるが、職位の上昇とは直接的な関係はない。
昇給基準線
学卒の新規採用労働者が定年まで勤務したと仮定した、いわゆる標準者の基本給を、毎年の定期昇給によってどのように上昇させていくかという、あるべき姿としての昇給曲線のこと。能力曲線、生計費水準、世間相場、経営方針などによって設計され、直線型、凹型、凸型、S字型などが基本的な型である。
一般的に、放射物型とS字型が多く見られるようである。
小集団活動
職場内に、会社の組織としてではなく、フォーマル、インフォーマルな小集団をつくり、仕事の自主管理や問題解決にあたるもの。 小集団活動の代表的な例として、ZD運動、QC活動などがある。
昇進
職能資格制度において、組織上の役職位が上がることをいう。昇進は一定の能力を保有する者(対応する資格)の中から適性を加味し、より上位のポストに就けることで、地位は上がるが必ずしも昇給を伴うものではない。
賞与
我が国の賞与は、基準内賃金の2~6ヶ月分にもおよび、年間賃金収入に占める割合が高い。 一般的に、労働者側は、生活費の重要な一部(賃金の後払い)としてとらえるのに対し、企業側は業績配分としてとらえている。
職種給
職種給は、職種に対して決定される賃金である。通常同業他社あるいは同地域における該当職種の賃金などを考慮して、企業外の職種別賃金相場によって決定されるものである。大工や左官などのように職種としての賃金相場が社会的に明確に形成され、職種によって賃金が決定されているような場合が、職種給の典型的な例である。
職能給
労働者の職務を遂行する能力、すなわち職務遂行能力を基準に決定される賃金で、日本で発達したもの。能力に対して賃金が支払われるのであるから、配置転換で職務が変わっても同一賃金でよく、柔軟性に富んでおり、職務より人間を中心とする日本の人事管理の考え方に適しているといえる。 職能給導入には、職能資格制度などの人事制度が不可欠である。
職能資格制度
仕事の困難度・責任度などをベースとした職能資格区分を設け、各職能資格区分に該当する職務遂行能力の種類や程度を明確にした職能資格基準を設定し、この基準に基づいて人事処遇を行う制度のこと。
職場懇談会
職場において、管理者と従業員が、日常の業務運営、人間関係、安全衛生などについて話し合う機会を設けるために設置されるものである。
職務拡大
職務の水平的拡大を意味する。複数の職務を担当させることにより、仕事の量と幅を広げることにより単調感を和らげ、勤労意欲の向上や仕事への満足を高めようとするものである。仕事の量を増やすということではハーズバーグの衛生要因に関連している。
職務記述書
各職務について職務分析を行った結果を職務ごとに記述したものであり、職務分類、職務評価と並んで職務分析の重要な資料である。
職務給
職務分析により職務の内容を明らかにした後、職務評価によって職務の相対的価値(職務の困難性、重要度、熟練度、作業条件)を定め、職務の等級付けを行い、その等級を基礎として決定する賃金である。
職務再設計
各従業員が能力を最大限に発揮でき、働きがいをもって積極的に仕事に従事できるように職務を設計することである。高齢化時代を迎え、企業においては中高年齢者が生産活動や組織活動の中核となっていくが、一般的に諸機能は加齢とともに低下する。そこで中高年齢者がその能力を使う際に職務が負担にならないで、なおかつ生産性やモラールを維持・向上させるように仕事の仕組みを再設計することが重要となっている。
職務充実
職務の垂直的拡大を意味する。具体的には、作業者本人が仕事の計画を立て自分でその組織を決め、仕事の進行状態や出来具合を自分で統制し、その結果について自分の責任や評価になるという職務内容にするというものである。仕事の質を充実させるということで、ハーズバーグの動機づけ理論に基づくものである。
職務評価
各職務について、困難度や責任の度合いに応じて、その相対的な評価を決定することをいう。通常は、職務分析によって得られた資料に基づき、内容が確定した職務について行われる。職務評価の方法としては、非量的評価方法として、序列法、分類法、量的評価方法として、点数法、要素比較法などがある。
職務分析
各職務について、課せられている仕事の内容や職務遂行過程で要求される能力(精神的能力、身体的能力)、職務遂行過程で受ける負荷(精神的負荷、身体的負荷)を調査し明らかにすることをいう。これらから得られる情報に基づいて職務記述書が作成され、職務分類のための職務評価の基礎資料となる。
職務明細書
職務分析の結果をまとめた職務記述書から、採用や配置・昇進等に当たっての人物選考資料など特定の用途に結びつけて、職務のあらまし、職務の内容、責任、職務遂行などの必要事項を明確に記述したものである。
ジョブコーチ
職場適応援助者。平成14年4月の障害者雇用促進法の改正により職場適応援助者事業が創設された。&br;知的障害者、精神障害者等について、専門知識を持ったジョブコーチを職場に派遣することにより障害者の特性を踏まえた人的支援を行う。この事業は、各都道府県ごとに設置された地域障害者職業センターにおいて実施される。
ジョブ・シェアリング
フルタイム労働者が通常一人で行う仕事を、特定の二人(または数人)で分担する方法。ワーク・シェアリングとは異なり、労働市場が逼迫した状況下で、定年退職したシニア、幼い子どもを持つ母親、働きながら大学院へ通う者などフルで働くことが困難な人材を有効活用する方法。
ジョブ・ローテーション
従業員をひとつの職務だけでなく、いくつかの職務を定期的、計画的に経験させる方法。
序列法
職務を全体として相互に比較して、複雑度・困難度・責任度に応じて価値序列を決める職務評価の非量的方法の一つ。 単純比較法(全職務を対象に1番、2番、3番と一挙に序列づける方法) と、一対比較法(職務ずつリーグ戦形式で総当たりで比較評価し、上位評価回数の多い順に序列づける方法)がある。
自立的作業集団
従来のベルトコンベア方式による「人間性喪失」の作業組織を解消するために考え出されたものである。 (1)作業単位を複合化することにより単純作業をなくす。 (2)作業方法も各労働者の自由に任せる。 (3)小集団作業組織にすることにより、各作業員の孤独感を解消す る。 (4)企業は、生産総量を決めるだけで、実際の作業は労働者側に任 せる。 というものである。 この方式は、我が国ではあまり普及しなかったものの、これに代わるものとして「小集団活動」によって労働の自主化が進められた。
人事異動
昇進、昇格など従業員の縦の異動と、狭義の配置転換、出向などといった横の異動を総合した概念であり、採用管理や退職管理などとともに雇用管理の一環をなすものである。
人事考課
人事上の決定に必要な従業員に関する個人別の情報を把握するために行う評定のこと。従業員の能力を開発、活用し、公正な処遇をすることによってモラールアップを図るため利用される。
人物比較(評定)法
考課集団の中から各評定項目の各段階ごとに優秀者、中間者、劣等者の標準的人物を選定し、これを基準として他の従業員を評価する方法。
図式(評定)尺度法
人事考課において信頼性・知識度といった各要素ごとに段階的評価基準を示す目盛りをもった直線的な尺度を用意し、該当する箇所にチェックする方法である。視覚に訴える点で理解しやすく、また、評価結果が自動的に数値換算できるという長所があるが、考課者の作為性が出やすい、ハロー考課を受けやすい、寛大化傾向が現れやすいなどの短所もある。
スキャンロン・プラン
アメリカのジョゼフ・スキャンロンによって提唱されたもので、労働者の努力によって、生産性が向上し人件費コストが節約された場合、その節約分を生産奨励金として労働者に配分しようというものである。我が国では、この考え方を賞与の決定方法として利用しており、その基本式は、「賞与支給額=売上高×標準人件費率-毎月支払った賃金総額」とする例が多く、売上高リンクによる成果配分方式である。
税制適格退職年金(適格年金)
積立金を社外の信託銀行、生命保険会社にその運用を委託する制度である。税法上、年々の積立金はその全額が損金扱いになる。最も広く普及しており、特に中小企業で採用されている。なお、平成24年3月末で廃止されることが決定している。
絶対評価
定められた業務執務基準や定められた能力の標準、すなわち個々人に対する期待度に照らして一人ひとりのレベルを判定する評価方法。
センシティビティ・トレーニング
感受性訓練と訳され、態度変容を目的とした体験学習技法の一つ。
専門職制度
部長、課長、係長といったライン組織の職位とは別に、高度な専門知識を活用し、企業戦略と結びつく研究、開発、調査、企画などの分野で特定の職務を担当するスタッフ職をいう。これらの専門職は、原則として、部下を持たず、特定の専門分野について研究し、専用スタッフとしてライン管理者に助言する。こうした本来的な専門職のほかに、近年、高学歴化や長期勤続者の増大により、それまでの一般職から管理職へという昇進ルート以外に設けられた処遇方式のものもある。
早期退職優遇制度
定年年齢を迎える前に、第2の人生に踏み出す人に対して、退職金の算定等についての優遇措置を講じる制度のこと。自己都合でも会社都合として扱い、定年時の支給率を適用し、その上にさらに加算金を上乗せするなどを行なう。従業員の高齢化、定年の延長などによる総額人件費の増大やポスト不足などのために、この制度を取り入れる企業が増えている。
総合決定給
賃金決定の際、それぞれの要素に分類せず、年齢、勤続、学歴、職務、能力、仕事、人柄など複数の賃金決定要素を総合的に勘案して賃金を決定する方式。各要素を総合的に評価し決定するので賃金決定基準が不明確になり、賃金が適正かどうか判断できないといった欠点があるが、終身雇用制による職種転換に適合する賃金決定方式であるため我が国に適しているといえる。
相対評価
人事考課において一定のグループ内で主として対人比較により序列づけを行うやり方。人物比較法、分布制限法などがあり、上位の考課者にとって記録法や絶対評価法でとらえられなかった面を補完し、常識的納得性を得られやすいという利点を持つ。
属人給
年齢、勤続、学歴といった労働者本人の属性を基準として定められているもの。本人給などとも呼ばれ、年功賃金の基底をなすものである。 高学歴化、高年齢化、能力主義や業績評価主義への移行などを背景として、最近では属人給の部分で生活費をカバーし、その上に職能給を上乗せする企業や、中高年齢者の賃金曲線の傾斜をゆるくすることによって賃金の上昇を抑制する企業が増えている。
組織開発
一定の組織改善の目標を組織の全構成員が自主的に設定し、改善計画を協議し役割を割り当て、その実行過程を構成員全員で自主統制し、その結果について自己評定を行い、それらを通して組織全体の能力を主体化し協働力を強化するという集団的実地教育活動である。 この集団的実地教育活動の場は、組織全体の場合もあるが、具体的には各職場が中心になって行うため、これを「職場ぐるみ訓練」と呼ぶ場合もある。