H26大綱国際課税
国際課税
- 1 国際課税原則の見直し(総合主義から帰属主義への変更)
(国 税)
(1)外国法人の国際課税原則の見直し
外国法人に対する課税原則について、いわゆる「総合主義」に基づく従来の国内法を、2010年改訂後のOECDモデル租税条約に沿った「帰属主義」に見直す。
(2)恒久的施設に帰せられる所得の位置づけ
外国法人がわが国に有する恒久的施設(Permanent Establishment)(以下「PE」という。)に帰せられる所得(以下「PE帰属所得」という。)を、従来の国内事業所得に代えて国内源泉所得の一つとして位置づける。
(3)PE帰属所得の算定
① PE帰属所得
PE帰属所得は、外国法人のPEが本店等から分離・独立した企業であると擬制した場合に当該PEに帰せられるべき所得とする。
② 内部取引
PE帰属所得の算定においては、外国法人のPEと本店等との間の内部取引について、移転価格税制と同様に、独立企業間価格に基づく損益を認識する。
③ PEへの資本の配賦及びPEの支払利子控除制限
外国法人のPEが本店等から分離・独立した企業であると擬制した場合に帰せられるべき資本(以下「PE帰属資本」という。)をPEに配賦する。また、外国法人のPEの自己資本相当額がPE帰属資本の額に満たない場合には、外国法人のPEにおける支払利子総額(外国法人のPEから本店等への内部支払利子及び本店等から外国法人のPEに費用配賦された利子を含む。)のうち、その満たない部分に対応する金額について、PE帰属所得の計算上、損金の額に算入しない。
(4)外国法人に係る外国税額控除制度の創設
外国法人のPEのための外国税額控除制度を創設する。
(5)内国法人の外国税額控除
内国法人が国外に有するPEに帰せられる所得(以下「国外PE帰属所得」という。)を国外源泉所得の一つとして定義し、内国法人の外国税額控除に関して国外PE帰属所得を算定する際には、上記(3)に準じて内部取引等を勘案する。
(6)その他
① 文書化
PEと本店等との間の内部取引の存否及び内容を明確にするための文書を作成し、税務当局からの求めがあった場合には遅滞なく提示し、又は提出しなければならないこととする。
② 個人課税
非居住者(個人)課税については、原則として、帰属主義に変更する外国法人に準じた取扱いとする。また、居住者(個人)課税についても、原則として、帰属主義に変更する内国法人に準じた取扱いとする。
(7)その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税及び平成29年分以後の所得税について適用する。
(以上につき付記参照)
(地方税)
(1)国際課税原則の見直し(総合主義から帰属主義への変更)
非居住者及び外国法人に対する国税の課税原則について、いわゆる「総合主義」に基づく従来の国内法が、2010年改訂後のOECDモデル租税条約に沿った「帰属主義」に見直されることに伴い、個人住民税、法人住民税及び事業税について、原則として、帰属主義に変更する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度分の法人住民税及び事業税並びに平成30年度分以後の個人住民税について適用する。
(以上につき付記参照)
- 2 その他
(国 税)
(1)民間国外債等の利子の非課税制度について、平成28年1月1日前に発行された特定民間国外債は、同日以後も目論見書等の記載事項の要件を満たす特定民間国外債として、当該記載事項の変更を要しないこととする。
(2)振替割引債の差益金額等の課税の特例の対象となる特定振替割引債のうち振替国債及び振替地方債については、特殊関係者に関する書類の提出を要しないこととする。
(注)上記の改正は、平成28年1月1日以後に特定振替割引債の償還金が支払われる場合について適用する。
(3)国外関連者との取引に係る課税の特例(いわゆる移転価格税制)について、その対象となる非関連者を通じた取引の範囲に役務提供取引等を加える。